2013年02月20日
幼稚園の思い出(1)
4才になり、ぼくは幼稚園に通うことになった。
幼稚園はぼくの家から徒歩2分くらいの近距離で、非常に便利だった反面、通学バスに乗車して幼稚園に通っている園児のことをうらやましく思っていた。
幼稚園は仏教系だったようで、観音様をまつっていたのか、春には甘茶を配る行事があったことを記憶している。
休み時間にはかくれんぼや「警察と泥棒」と呼んでいた鬼ごっこをして遊んでいた。
よく覚えている思い出がある。
ひとつはお弁当にまつわる事件だった。
幼稚園の年長組、5才になっていたぼくの、4月初めての授業の日、園児はお母さんが作ってきたお弁当をお昼に食べることになった。
ぼくは食べ物の好き嫌いが多い子供で、その日のお弁当に入っていた、とろろ昆布がまぶしてあったおにぎりが食べることができず、残してしまった。
となりの席の敦子ちゃんもお弁当を広げていたが、彼女もお弁当に添えられていた蕗の煮物を食べられずにいた。
昼食時間の終盤、先生はみんながお弁当をお弁当を残さず食べたか、チェックしてまわる。
ぼくと敦子ちゃんが残したのを見つけ、ちゃんと全部食べるようにと言い残して、なにか用事があったのか、教室を出て行ってしまった。
教室に残った他の児童たちは、ぼくたち二人のまわりに集まってきた。
女子は敦子ちゃんを、男子はぼくを取り囲み「負けるな」「がんばれ」と声をあげて応援しだしたのである。
「広重くん、がんばれ!女なんかに負けるな!がんばって食べろ!」
親友だった男の子の村山くんを先頭に、男の子たちはぼくのまわりで声援を送る。
女子のみんなは
「敦子ちゃん、男の子なんかに負けないで!」
と隣の女の子に声援を送っている。
ぼくの中で葛藤がおこる。
嫌いなものを食べるのはやはり嫌だったし、とろろの臭いを嗅ぐだけで嘔き気がしてくる。
しかし男の子たちの声援を裏切るのは、なにか友情を台無しにするような気持ちがして、それも嫌だった。
正直、思っていたのは、この男の子たちが応援などしないでいてくれたらいいのに、ということだった。そうすれば誰も見ていない隙にこのおにぎりを窓から捨てるなどして、先生の目をごまかすことが出来るのに。そう考えていた。
いっこうにぼくも女の子も残したお弁当を食べようとしない。声援に飽きてきたのか、先頭にたって応援をしていた村山くんがふとぼくの机のそばを離れた。
ぼくはこの瞬間にお弁当の蓋を閉じ、食べたふりをした。
すぐに村山くんはぼくの机のそばに戻ってきた。
「あ!広重くんが食べた!男が勝ったぞ!うおー!」
と大声をあげた。
女の子の応援団はぼくの弁当箱を見逃さなかった。ぼくの机に駆け寄り、弁当の蓋を開けた。そこにはぼくの残したととろ昆布のおにぎりが燦然と残っていた。
「広重くん、おにぎり食べてはらへんやん!」
村山くんはがっかりし、ぼくの信用は地に落ちてしまった。
結局、ぼくも隣の席の女の子も、弁当の残りを食べることは出来なかった。
その後、先生が戻ってきて、今度から食べられるように練習しましょうねと指導されて、残すことは許可された。
しかしぼくは村山くんにすごく悪いことをしたような気がして、放課後に謝りにいった。
村山くんは
「まあええけどさあ。今度からとろろくらい食べられるようになれよ」
と、ぼくを励ましてくれた。
幼稚園はぼくの家から徒歩2分くらいの近距離で、非常に便利だった反面、通学バスに乗車して幼稚園に通っている園児のことをうらやましく思っていた。
幼稚園は仏教系だったようで、観音様をまつっていたのか、春には甘茶を配る行事があったことを記憶している。
休み時間にはかくれんぼや「警察と泥棒」と呼んでいた鬼ごっこをして遊んでいた。
よく覚えている思い出がある。
ひとつはお弁当にまつわる事件だった。
幼稚園の年長組、5才になっていたぼくの、4月初めての授業の日、園児はお母さんが作ってきたお弁当をお昼に食べることになった。
ぼくは食べ物の好き嫌いが多い子供で、その日のお弁当に入っていた、とろろ昆布がまぶしてあったおにぎりが食べることができず、残してしまった。
となりの席の敦子ちゃんもお弁当を広げていたが、彼女もお弁当に添えられていた蕗の煮物を食べられずにいた。
昼食時間の終盤、先生はみんながお弁当をお弁当を残さず食べたか、チェックしてまわる。
ぼくと敦子ちゃんが残したのを見つけ、ちゃんと全部食べるようにと言い残して、なにか用事があったのか、教室を出て行ってしまった。
教室に残った他の児童たちは、ぼくたち二人のまわりに集まってきた。
女子は敦子ちゃんを、男子はぼくを取り囲み「負けるな」「がんばれ」と声をあげて応援しだしたのである。
「広重くん、がんばれ!女なんかに負けるな!がんばって食べろ!」
親友だった男の子の村山くんを先頭に、男の子たちはぼくのまわりで声援を送る。
女子のみんなは
「敦子ちゃん、男の子なんかに負けないで!」
と隣の女の子に声援を送っている。
ぼくの中で葛藤がおこる。
嫌いなものを食べるのはやはり嫌だったし、とろろの臭いを嗅ぐだけで嘔き気がしてくる。
しかし男の子たちの声援を裏切るのは、なにか友情を台無しにするような気持ちがして、それも嫌だった。
正直、思っていたのは、この男の子たちが応援などしないでいてくれたらいいのに、ということだった。そうすれば誰も見ていない隙にこのおにぎりを窓から捨てるなどして、先生の目をごまかすことが出来るのに。そう考えていた。
いっこうにぼくも女の子も残したお弁当を食べようとしない。声援に飽きてきたのか、先頭にたって応援をしていた村山くんがふとぼくの机のそばを離れた。
ぼくはこの瞬間にお弁当の蓋を閉じ、食べたふりをした。
すぐに村山くんはぼくの机のそばに戻ってきた。
「あ!広重くんが食べた!男が勝ったぞ!うおー!」
と大声をあげた。
女の子の応援団はぼくの弁当箱を見逃さなかった。ぼくの机に駆け寄り、弁当の蓋を開けた。そこにはぼくの残したととろ昆布のおにぎりが燦然と残っていた。
「広重くん、おにぎり食べてはらへんやん!」
村山くんはがっかりし、ぼくの信用は地に落ちてしまった。
結局、ぼくも隣の席の女の子も、弁当の残りを食べることは出来なかった。
その後、先生が戻ってきて、今度から食べられるように練習しましょうねと指導されて、残すことは許可された。
しかしぼくは村山くんにすごく悪いことをしたような気がして、放課後に謝りにいった。
村山くんは
「まあええけどさあ。今度からとろろくらい食べられるようになれよ」
と、ぼくを励ましてくれた。