2010年03月22日

30世紀の男

スコット・ウォーカー 30世紀の男 [DVD]スコット・ウォーカー 30世紀の男 [DVD]
出演:スコット・ウォーカー
販売元:アップリンク
発売日:2010-01-15
おすすめ度:3.0
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スコット・ウォーカーが好きだというミュージシャンは、私の知り合いでは灰野敬二さんくらいで、滅多にファンには出会わない。裸のラリーズや早川さんのファンなどにはいくらでも会うのに加橋かつみのファンには滅多に会わないように、スコット・ウォーカーのことも若い世代には「知る人ぞ知る」という程度なのかもしれない。

確かにオーケストレーションをバックに朗々と歌う歌唱方法はあまり日本人向けではないのかもしれない。しかし水谷さん、早川さんなどのボーカルの意味を知る人なら、もう声だけでこのシンガーが同じ系列の、あまりも深い世界をさまようシンガーであることはすぐに気がつくはずだ。

このドキュメンタリーは、めったにカメラの前には姿をあらわさず、インタビューも極端に少ないスコット・ウォーカーの、ヒストリー、作品、現在の姿、そして現在も進行形のシンガー・ソング・ライターであることをきちんと捉えた95分の映画である。

なんて繊細で、神経質で、完璧主義者で、そして深遠なシンガーだろうか。この映画を見ると、もちろん彼の素晴らしさもだが、そのように生きてこれた精神力の強さと、そう出来てきた彼の人生の幸福にとてつもなく感動してしまう。
こんな生き方ができるシンガーがいるなんて、世界はまだまだすごい。パッケージのCDが売れないからとデジタル録音でお手軽にアルバムを作っている我々の現状が果てしなく情けなく思えてくる。

アヴァンギャルドだサイケだノイズだと言っていると、普通の音楽よりもどこか偉くなったように思っているようで、そんな錯覚とはさっさとおさらばしたい。
この映画の途中、和音と不協和音の間の音を模索するシーンが出てくるが、音も歌もまだまだ先があること、誰も達していない世界もまだあることを象徴するようなシーンだった。
常識はもっともっと越える必要がある。老齢のシンガーがまだこんなに先を行っているのにと、我が身を反省してしまったよ。


kishidashin01 at 21:07│clip!映画