2008年12月28日
想い出の、思い出
FMNサウンドファクトリーのページで、石橋くんが想い出波止場について少し書いてくれていた。
『広重君のブログで知ったけど、想い出波止場の再発、水中JOEが飛び抜けて売れているらしい。
そりゃそうだろう。傑作揃いの想い出波止場の諸作の中でも水中JOEはずば抜けた傑作だ。山本、津山の両氏からもそれぞれ「あれだけのものはもう二度と作れない」と聞いたことがある。
何というか、隅から隅まで緻密に狂ってる。気を抜いたところが一瞬もない。狂ってるとは言ったけどあそこまで緻密に密度の濃い音だと普通の神経では狂ってるとしか受け取れないくらいだ、と言う意味だ。』
はい、本当にそのとおりだ。
Pヴァインなのでしばらくは廃盤にはならないだろうが、年末年始のこの時期は出荷もお休みなので、タワーレコードやディスクユニオン、HMVなどの店頭で「想い出波止場/水中JOE」を見かけられたら即購入しておかれることをおすすめする。
間違いなく、山本精一全作品の中でもトップクラスの出来の良いアルバムだから。

水中JOE (HQCD)
先日、Pヴァインから来年1月9日発売の「金星」「VUOY」「大阪・ラ」のサンプル盤も送られてきた。無事完成したので、来週の後半には各CDショップの店頭に並ぶだろう。「大音楽」を購入された方はBOXがついてきたと思うので、それにこの3枚を購入&収納してください。
想い出波止場のレコーディングのほとんどを担当されたエンジニアは、オメガサウンドの小谷さんという方だった。小谷さんは山本さんの同級生だったはずで、小谷さんの人生そのものが山本さんに激しく影響されているわけで、山本・小谷コンビの傑作が想い出波止場の作品群ということになると思う。
小谷さんは本当に変わったエンジニアだった。
いや、録音技術はまるっきりクオリティの高い、普通のエンジニア技術者だった。
ただ、スタジオの外ではいくつかのおもしろい逸話のある方だった。
一番記憶に残っているのは、小谷さんが『高くてまずい店』が好きだったことだ。居酒屋でも定食屋でもレストランでもいいのだが、その料理がまずい上に、支払いの時に「ええ!この味でこの値段!?」と絶句するようなお店に出会った時、えも言われぬ感動につつまれるというのだ。そしてさらにたちの悪いのは、そのお店に知り合いを連れて行き、「ね、まずいでしょ」と言うのが好きときている。こんな人には小谷さん以外会ったことがない。
何かのマスタリングをしている時にこんなことを言われたことがある。『この間、渋谷で久しぶりにひどい店に出会いました。ボアダムズのマスタリングが終わって、知り合いのエンジニアと夜の渋谷にでかけたんですよ。ライブハウスのクアトロの近くのお店で、ビール2本とつまみを少し、おでんをちょっと食べましてね。会計しようとレジに行ったら、2万何千円とか言われましてね。思わず吹いてしまいましたわ』
私は「広重さん、今度ご一緒に」と誘われなかったので、ほっとしたことを覚えている。
石橋くんのブログには、想い出波止場の信じられないようなレコーディングのことが少し書かれているが、私はあえて小谷さんに想い出波止場の録音の秘密はきかなかった。もう今は小谷さんと会うことはほとんどないので、この秘密は永久にとかれることがないのかもしれない。
これは私の推測だが、動いている24トラックのレコーダーのテープリールを手でとめたのではないか、と思える箇所が「水中JOE」録音楽曲の一部にある。そんなことをしたらレコーダーのメンテナンスに数万〜十数万円はかかってしまうが、もしかしたらやったかな、と思っている。
これは私の知っている小谷さんのレコーディングのエピソード。
1992年か93年くらいの全力オナニーズの「奴隷復活」というアルバムの録音の時だったと思う。なにやら録音をしている時に、SMの音を入れようということになった。その頃、ランコさんは大阪のSMクラブで働いていたので、本職の風俗のSM嬢にスタジオに来てもらい、全力オナニーズのメンバーを鞭で叩いたり、ロウソクを素肌にたらしたりして、レコーディングした。
しかしよく考えてみれば、鞭で叩く音は、本当にSM嬢に鞭で叩いてもらわなくても、何か紐状のもので何かをたたけばそのような音は出るものだし、ロウソクをたらす音(そんな音はそもそもない)は結局録音できなかった。
小谷さんの数々のレコーディングの伝説の中で、この全力オナニーズのSM嬢による録音が成功だったのか、失敗だったのか、今となってはもうわからない。
『広重君のブログで知ったけど、想い出波止場の再発、水中JOEが飛び抜けて売れているらしい。
そりゃそうだろう。傑作揃いの想い出波止場の諸作の中でも水中JOEはずば抜けた傑作だ。山本、津山の両氏からもそれぞれ「あれだけのものはもう二度と作れない」と聞いたことがある。
何というか、隅から隅まで緻密に狂ってる。気を抜いたところが一瞬もない。狂ってるとは言ったけどあそこまで緻密に密度の濃い音だと普通の神経では狂ってるとしか受け取れないくらいだ、と言う意味だ。』
はい、本当にそのとおりだ。
Pヴァインなのでしばらくは廃盤にはならないだろうが、年末年始のこの時期は出荷もお休みなので、タワーレコードやディスクユニオン、HMVなどの店頭で「想い出波止場/水中JOE」を見かけられたら即購入しておかれることをおすすめする。
間違いなく、山本精一全作品の中でもトップクラスの出来の良いアルバムだから。

水中JOE (HQCD)
先日、Pヴァインから来年1月9日発売の「金星」「VUOY」「大阪・ラ」のサンプル盤も送られてきた。無事完成したので、来週の後半には各CDショップの店頭に並ぶだろう。「大音楽」を購入された方はBOXがついてきたと思うので、それにこの3枚を購入&収納してください。
想い出波止場のレコーディングのほとんどを担当されたエンジニアは、オメガサウンドの小谷さんという方だった。小谷さんは山本さんの同級生だったはずで、小谷さんの人生そのものが山本さんに激しく影響されているわけで、山本・小谷コンビの傑作が想い出波止場の作品群ということになると思う。
小谷さんは本当に変わったエンジニアだった。
いや、録音技術はまるっきりクオリティの高い、普通のエンジニア技術者だった。
ただ、スタジオの外ではいくつかのおもしろい逸話のある方だった。
一番記憶に残っているのは、小谷さんが『高くてまずい店』が好きだったことだ。居酒屋でも定食屋でもレストランでもいいのだが、その料理がまずい上に、支払いの時に「ええ!この味でこの値段!?」と絶句するようなお店に出会った時、えも言われぬ感動につつまれるというのだ。そしてさらにたちの悪いのは、そのお店に知り合いを連れて行き、「ね、まずいでしょ」と言うのが好きときている。こんな人には小谷さん以外会ったことがない。
何かのマスタリングをしている時にこんなことを言われたことがある。『この間、渋谷で久しぶりにひどい店に出会いました。ボアダムズのマスタリングが終わって、知り合いのエンジニアと夜の渋谷にでかけたんですよ。ライブハウスのクアトロの近くのお店で、ビール2本とつまみを少し、おでんをちょっと食べましてね。会計しようとレジに行ったら、2万何千円とか言われましてね。思わず吹いてしまいましたわ』
私は「広重さん、今度ご一緒に」と誘われなかったので、ほっとしたことを覚えている。
石橋くんのブログには、想い出波止場の信じられないようなレコーディングのことが少し書かれているが、私はあえて小谷さんに想い出波止場の録音の秘密はきかなかった。もう今は小谷さんと会うことはほとんどないので、この秘密は永久にとかれることがないのかもしれない。
これは私の推測だが、動いている24トラックのレコーダーのテープリールを手でとめたのではないか、と思える箇所が「水中JOE」録音楽曲の一部にある。そんなことをしたらレコーダーのメンテナンスに数万〜十数万円はかかってしまうが、もしかしたらやったかな、と思っている。
これは私の知っている小谷さんのレコーディングのエピソード。
1992年か93年くらいの全力オナニーズの「奴隷復活」というアルバムの録音の時だったと思う。なにやら録音をしている時に、SMの音を入れようということになった。その頃、ランコさんは大阪のSMクラブで働いていたので、本職の風俗のSM嬢にスタジオに来てもらい、全力オナニーズのメンバーを鞭で叩いたり、ロウソクを素肌にたらしたりして、レコーディングした。
しかしよく考えてみれば、鞭で叩く音は、本当にSM嬢に鞭で叩いてもらわなくても、何か紐状のもので何かをたたけばそのような音は出るものだし、ロウソクをたらす音(そんな音はそもそもない)は結局録音できなかった。
小谷さんの数々のレコーディングの伝説の中で、この全力オナニーズのSM嬢による録音が成功だったのか、失敗だったのか、今となってはもうわからない。