2011年02月23日

徳島で池田憲章氏講演会

 徳島県北島町で、地元出身の作家・海野十三顕彰をはじめ独自の文化活動を精力的に展開している小西昌幸さん(北島町立図書館・創世ホール館長/海野十三の会副会長)から、下記講演会の御案内をいただきました。


池田憲章講演会「脚本家・金城哲夫 特撮とドラマを初めて融合させた人」


【日時】2月27日(日)午後2:30開演
【場所】北島町創世ホール
 徳島県板野郡北島町新喜来字南古田91 北島町立図書館・創世ホール
 電話 088(698)1100



以下は、小西さんの筆による「文化ジャーナル」2011年2月号の文章の転載です。いい文章です。催しの宣伝のために全文を貼り付けておきます


--------------------------------------------------------------
2・27池田憲章氏講演会
演題●脚本家・金城哲夫〜特撮とドラマを初めて融合させた人

■北島町立図書館・創世ホールは2011年2月27日(日)午後2時半から池田憲章氏講演会「脚本家・金城哲夫〜特撮とドラマを初めて融合させた人」を開催する。

■当館では、特撮やSF、テレビ・ドラマ、脚本の世界にはかなり深いアプローチをしてきたと自負している。2003年3月に竹内博氏講演会「三人の怪獣王〜円谷英二、香山滋、大伴昌司」、2007年2月に池田憲章氏講演会「故郷は地球〜脚本家・佐々木守がめざしたもの」、2008年3月に辻真先氏講演会「アニメ三国志〜脚本執筆1500本・疾風怒濤の青春録」、2010年2月に今野勉氏講演会「わがテレビ青春記〜テレビ・ディレクター50年」を開いている。企画者としては、これでテレビ脚本や演出の世界についてはやりつくしたつもりだった。何しろ、戦後ドラマ脚本の世界を代表して佐々木守さんを取り上げ、アニメ脚本界を代表して辻真先先生ご本人に登場いただき、とどめに伝説のテレビ・ディレクター今野勉さんにテレビ演出の世界を話していただいたのだから(こんな公立施設はまず存在しないはずだ)。

■だが、どうしてもあと一度特撮ドラマの脚本家を取り上げなければならないのではないか、と言う機運が沸き起こった。それは、当「創世ホール通信/文化ジャーナル」2009年9月号でも取り上げたが上原正三先生の映画化されなかった脚本「M78星雲の島唄‐金城37才・その時‐」(現代書館刊『上原正三シナリオ選集』所収)を読み、大きな衝撃を受けたことによる。そこには、37歳という若さで世を去った天才脚本家・金城哲夫への激しく深い上原先生の思いが込められていて、あまりに熱かったのだ。余人にはうかがい知れないほどの、あるいは何人も立ち入れないほどの友情と高い精神性がその作品にはそびえていた。

■金城さんをやりたいという思いは昨年春頃から熟成醗酵させてきたものだった。よく考えると2011年2月26日は金城哲夫さんの35年目のご命日である。私は何か月も悩んで上原正三先生に講演依頼の書簡をお送りした。当然、北島町立図書館・創世ホール館長としての公文書による依頼状である。その企画へのひそかな思いは、交流が復活していたSF特撮研究家の池田憲章氏にも伝えてあった。

■結論から言えば上原正三先生の講演会企画は実現しなかった。先生はご自身の立ち位置について、自分は生涯一脚本家であるという信念に基づき、講演依頼や、テレビやラジオへのご出演を固く辞退されているのである。その態度は誠に潔かった。こういうときは企画者もきっぱり潔くあらねばならない。私は、上原先生に電話をかけ「先生のご心情は良く分かりました。ご面倒をおかけし申し訳ありませんでした。もしいつか、人生最後にたった一度だけ単独講演会をしてやってもよいぞという気になったらそのときは、ぜひ創世ホールを思い出してください」と伝えた。上原先生は笑って受け止めてくださったのだった。

■その後、熟慮して池田憲章氏に私は相談を持ちかけた。次のような内容だ(以下大意)。《……前に池田さんに佐々木守さんをやってもらった。よく似た路線の企画になってしまうが、どうしても自分は金城哲夫さんをここでとりあげておきたい。今度は初期ウルトラ・シリーズの王道路線にスポットを当てることになる。これでたぶん創世ホールとしてはテレビの世界を俯瞰する講演企画の打ち止めになるだろう。だからもう一度、力を貸してくれないか。我々の恩返しの思いをこめて、天国の金城哲夫さんに捧げる企画にしたいのだ。本当は上の世代の人たちがよいかもしれないが、小学生のときにウルトラ・シリーズを体験し、熱しぶきを受けた我々の手で精一杯アプローチをしてみたい。だからぜひ力を貸して欲しい。》

■池田氏は「自分もいつか本腰を入れて金城さんに正面から向き合わなければならないと考えていた。考えさせてもらいますよ」といった。こうして、今回の企画の輪郭が完全に定まったのだった。

■私は、金城哲夫さんが脚本を書いた「ウルトラマン/小さな英雄」(監督・満田かずほ)に泣いたクチだ。小学生のとき、放送を見てショックを受けた。人間の囮(おとり)になって命を落とす友好珍獣ピグモンが哀れで、涙がこぼれたのだった。科学特捜隊はピグモンの勇敢さに哀悼の意を表して特別隊員の称号を与える。そして「さらばウルトラマン」(脚本・金城哲夫、監督・円谷一)では「主人公が負けてしまい命を落とすことも世の中(ドラマ)にはあるのだ」ということを知り、大きな衝撃を受けたのだった。

■私は、子ども番組を軽視する人々のことをよく知っている。例えば前回池田氏に佐々木守さんを取り上げていただいたとき、チラシに佐々木守脚本・実相寺昭雄監督作品「ウルトラマン/故郷は地球」に登場するジャミラの無念と作り手たちの心意気について、力をこめてオマージュの文章を書いた(〔略〕哀れな怪獣の姿で地球に帰還したジャミラの悲しみを私たちは忘れない/〔略〕/水流攻撃で苦しみもがき続け、ついに息絶えるジャミラの情景に、赤ん坊の泣き声をかぶせた監督・実相寺昭雄の心意気を私たちは決して忘れない/この催しを、天界の佐々木守と実相寺昭雄に慎んで捧げる!)。その文章は県外の公立文化施設の友人がインターネットの日記で高く評価してくれたのだが、それを見た女性が「ウルトラマンですか(笑)」と、せせら笑うようなコメントを寄せたことがあった。友人は、正面から「故郷は地球」は重たいドラマなのだと返答してくれていたが、偏見を持つ人は瞳が曇っているから、彼女の胸に友人の言葉が届いたかどうかは分からない。その女性は文化施設の企画担当者のようだった。私は、文化表現にたずさわる企画担当者がそのような偏見を持っていること、そして自己の偏見に無自覚でありながら他者の思い入れを冷笑するような姿勢を目にして、ただただ哀れに思ったのだった。

■大阪府吹田市にあった府立国際児童文学館はそのような偏見は微塵もなく、2007年のときも2008年のときもチラシを送ってあったら同館のホームページに北島町の講演会情報をきちんと掲載してくださっていたのだった。私は、児童文化を軽視する風潮は打破されなくてはいけないと痛切に思う。

■1月30日から図書館1階のカウンター前で「金城哲夫作品のウルトラ怪獣」と題して、ガラス・ケースに入れた怪獣のガレージキット(30センチスケールの精密フィギュア)を展示している。これは私の古い友人である板野町在住の三好信司さん(現・板野町立図書館長)の貴重コレクションの内、金城哲夫作品(共作含む)に登場するものを飾っていただいたものだ。金城怪獣の6〜7割が並んでいるのではないか。どれも一つのキットが数万円する貴重なものなので、ぜひご堪能いただきたい(展示は2月27日夕方まで)。せっかくなので以下に、そのリストを掲載させていただくことにする。数量は合計40体である(怪奇植物スフランは1体とカウント)。

【「ウルトラQ」の怪獣】⇒巨猿ゴロー(「五郎とゴロー」)、岩石怪獣ゴルゴス(「SOS富士山」)、モグラ怪獣モングラー(「甘い蜜の恐怖」)、大グモタランチュラ(「クモ男爵」)、隕石怪獣ガラモン(「ガラダマ」「ガラモンの逆襲」)、セミ人間(「ガラモンの逆襲」)、誘拐怪人ケムール人(「2020年の挑戦」)、大ダコスダール(「南海の怒り」)

【「ウルトラマン」の怪獣】⇒ウルトラマン、宇宙忍者ベムラー(「ウルトラ作戦第一号」)、磁力怪獣アントラー(「バラージの青い石」)、どくろ怪獣レッドキング(「怪獣無法地帯」)、有翼怪獣チャンドラー(「同」)、地底怪獣マグラー(「同」)、怪奇植物スフラン(「同」)、友好珍獣ピグモン(「同」「小さな英雄」)、えりまき怪獣ジラース(「謎の恐竜基地」)、油獣ぺスター(「オイルSOS」)、凶悪宇宙人ザラブ星人(「遊星から来た兄弟」)、にせウルトラマン(「同」)、高原竜ヒドラ(「恐怖のルート87」)、古代怪獣ゴモラ(「怪獣殿下〔上・下〕」)、黄金怪獣ゴルドン(「地底への挑戦」)、伝説怪獣ウー(「まぼろしの雪山」)、悪質宇宙人メフィラス星人(「禁じられた言葉」)、宇宙恐竜ゼットン(「さらばウルトラマン」)。

【「ウルトラセブン」の怪獣】⇒ウルトラセブン、カプセル怪獣ウインダム(「姿なき挑戦者」)、宇宙怪獣エレキング(「湖のひみつ」)、変身怪人ピット星人1(「同」)、変身怪人ピット星人2(「同」)、カプセル怪獣ミクラス(「同」)、反動宇宙人ゴドラ星人(「マックス号応答せよ」)、幻覚宇宙人メトロン星人(「狙われた街」)、宇宙竜ナース(「魔の山へ飛べ」)、宇宙ロボットキングジョー(「ウルトラ警備隊西へ」)、海底原人ノンマルト(「ノンマルトの使者」)、蛸怪獣ガイロス(「同」)、幽霊怪人ゴース星人(「史上最大の侵略」)

【「快獣ブースカ」の怪獣】⇒快獣ブースカ

■この数年、創世ホール講演会では開演前にピンク・フロイドの「炎」(1975)を会場内に流すようにしている。「炎」の原題は「ウッシュ・ユー・ワー・ヒア」。あなたがここにいて欲しいという意味である。ある特定ジャンルの先人に捧げたオマージュ的意味合いの非常に濃い催しなので、音楽もちゃんと意図をもって流しているつもりだ。だから今年の催しならば、当施設に金城哲夫さんの魂に降りてきていただき、ぜひ我々の仕事ぶりを見ていただきたいという願いを込めている。それは池田さんの講演内容であり、三好さんの怪獣ガレージキットであり、私の企画宣伝についてである。

■人生には、あとで振り返って、あの日あのときあの場所でしか実を結ばなかったという種類の出来事がある。この企画はまぎれもなくそういうタイプの催しだ。この時期、池田憲章氏が特撮のみを語る講演、それも金城哲夫について語る講演が体験できるのは創世ホールだけなのだ。

■こんなことは書く必要がないことかも知れず、お叱りを受けるかも知れないが、私も池田さんも三好さんも全く同年代=50代半ばの年齢である。37歳で他界された金城哲夫さんよりもおよそ20年近く長く生きていることになる。そして3人とも病気持ちである。私は20年以上前から潰瘍性大腸炎で難病指定、池田さんは生活習慣病の持病があり時々入院したりしている身体、そして三好さんは心臓のバイパス手術を受けている。みな身体にガタがきているのである。50代の多くは身体のどこかにガタが来ているといってよいだろう。そんな我々が小学生のときに決定的に胸を熱くしたのが、円谷の初期ウルトラ・シリーズなのだった。だから、まぎれもなくこの催しは天国の金城さんに捧げる催しである。もっと言えば円谷英二、円谷一、大伴昌司、佐々木守、実相寺昭雄といった先人たちへの深いオマージュをこめた催しである。そして私にとっては、上原正三先生や沖縄の金城家ご遺族にも深い尊敬をこめてこの催しは捧げられる。どうか2月27日、金城哲夫さん35年目の命日の翌日、四国徳島の北島町で行なわれる全国でただひとつの催しに多くの人に足を運んでいただきたいと思う。

(2011・02・01脱稿/文中一部敬称略/文責=北島町立図書館・創世ホール館長小西昌幸)


kishidashin01 at 15:16│clip!ライブ