2010年07月23日

マイナス・ゼロ

広瀬正著「マイナス・ゼロ」を読んだ。



マイナス・ゼロ 広瀬正・小説全集・1 (集英社文庫)マイナス・ゼロ 広瀬正・小説全集・1 (集英社文庫)
著者:広瀬 正
販売元:集英社
発売日:2008-07-18
おすすめ度:4.0
クチコミを見る


先日、「時の娘」を読んで以来、タイムマシンを扱った小説にはまってしまい、それじゃあ広瀬正の「マイナス・ゼロ」だろうということで、購入。

私はこの本を発表された当時も読んでいないし、人気を呼んだというラジオドラマも聞いていない。
気がついた時は絶版になっており、2008年に復刊されたことも知らなかった。

内容をかいつまんで言えば、昭和38年にあらわれたタイムマシンに乗ってしまった主人公が昭和7年の日本に到着、トラブルがおこり元の時代に帰ることが出来なくなってしまう。さてそこから昭和の時代をどう生きていくか、というお話である。
もちろんタイムパラドックスの趣向は最高におもしろい、美人のヒロインは登場する、段々に辻褄があっていって最後に全ての謎が解決するストーリーは素晴らしい。
しかし、タイムマシンそのものはそれほどには活躍しない。SF的シーンはかなり少なく、むしろ未来から過去の日本に到着した主人公がどのように生活していくかにほとんどのページが割かれている。
昭和7年や20年の銀座、世田谷、その町の人々の風俗、人情などは細かいディテールで描かれており、当然その時代に生まれていない我々の世代はノスタルジーとして楽しむしかないが、それでも一級の「近過去の時代風俗小説」と呼んでも過言ではないかもしれない。

映画「Always 三丁目の夕日」を見ればわかるように、現代はCGで昭和の風景を見事に実像化できる時代である。ぜひこの「マイナス・ゼロ」を実写映画化してほしいと思う。

小説の方は、よく読まないと、この人が後のこの人で、というあたりがこんがらがるかもしれない。それにこれって時空を超えた近親相姦では、と思える部分も。(笑)

まあ登場人物では、タイムスリップした先でやっかいになる「カシラ」の一家が最高です。
実写映像化するなら、この一家のキャストをどうするかがポイントになりそう。


昨年の夏はハインラインの「夏への扉」を薦めましたので、今年はこの「マイナス・ゼロ」をどうぞ。



kishidashin01 at 00:07│clip!読書