2010年05月14日

日本語ということば

私のファンであるという新潟の女の子から『広重さん、この話は知っていますか?』と薦められたのが、この本。


日本語ということば (Little Selectionsあなたのための小さな物語)日本語ということば (Little Selectionsあなたのための小さな物語)
販売元:ポプラ社
発売日:2002-05
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ここには橋本治、鴨下信一、久世光彦、寺山修司などといったプロの作家の日本語に関する考察を書いた小エッセイが7編、そして小学校二年生の女の子が書いた作文が1編収録されている。

どのエピソードもそれなりにおもしろいが、ダントツに素晴らしいのはその無名の小学校二年生の女の子が書いた作文『「あまえる」ということについて』(第47回全国小・中学校作文コンクール/作文優秀作品)である。
私はこの本のことを知らなかったし、教えてくれた彼女がどうしてこの本を知ったのはわからないが、おそらく優良な児童書の紹介者であり、児童文学のプロである赤木かん子さんがこの本をプロデュースされている関係で知ったのではないかと思う。私も赤木さんの本は数冊持っている。

『「あまえる」ということについて』は小学校二年生の女の子が「セロ弾きのゴーシュ」を題材に、自分の幼稚園時代のことを振り返りながら、自分がどうして素直に親に甘えられなかったのかを考察している、ものすごい文章である。小学校低学年の女児がここまで物事を冷静にとらえ、人の気持ちをくみとりながら自分の生き方に照らし合わせているかなど、誰が気づくだろうか。
私のファンでもしこの本を読んだことがなければ、必ず読んだ方がいい。


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 わたしは、まい日、ようちえんのもんをくぐる時、おかあさんとわかれのあく手をして、「がんばるぞ」と思いました。それは、元気な「がんばるぞ」じゃなくて、心の中でなきながら言う「がんばるぞ」です。わたしは、いえにかえってきても、うーんとがんばっていて、おとうさんにもおかあさんにもあまえることができなかったのだとおもいます。
 今考えると、わたしの「がんばるぞ」は、本当の「がんばるぞ」ではなかったと思います。「つらいのがんばってがまんするぞ」の「がんばるぞ」だったのです。わたしは、へんなものがいっぱいで、じぶんじしんもまわりの人も、何もかもちゃあんと見ることができなかったのだと思います。わたしは、だれにもあまえないで、心をきつくしてぼろぼろないていただけだったのかもしれません。だから、いくらがんばっても、つらいことばっかりだったのだと思います。わたしのがんばりは、がまんするだけで、本当のがんばりにつながらなかったのです。
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悩んでいる女の子諸君、ぜひどこかでこの本を手にとって読んでみてね。


赤木さんの解説がいかしていた。
『ただひとついまだにわからないのは、この作品がなぜ"最優秀"ではなく"優秀作品"にしかならなかったのか、である』


私もそう思います。


kishidashin01 at 02:36│clip!読書