2009年11月30日

あがた森魚ややデラックス

agatad


昨日は十三・第七藝術劇場という映画館に「あがた森魚ややデラックス」を見に行った。

この映画はあがたさんの還暦を記念して北海道から沖縄・石垣島までの60数カ所ものライブツアーを追ったドキュメンタリーだ。前半がライブハウスや喫茶店などの小さな会場でのライブのハイライトと、その行程での風景、出会い、トラブルや、ユニークなあがたさん、わがままなあがたさんの生な姿を収録したもの。後半は東京・九段会館での、はちみつぱいのメンバーや、矢野顕子、緑魔子も参加した大がかりなコンサートのハイライト集となっている。

基本的にはあがた森魚というシンガーのことを知らないと、内容は理解できない。しかしあがたさんの歌を知っていたり、実際にライブを見たりした人、彼の人となりを知っている人なら、かなりおもしろく楽しめる内容だ。

簡単に言えば「わがまま」な60才のフォークシンガーである。逆に言えば、60才なのにこんなにわがままでいられる幸せなシンガーでもある。私から見れば、素晴らしい曲、素晴らしいアルバムを何枚も出してきたあがたさん、もう何をやってもいいと思うので、怒っても、怒鳴っても、酒飲んではしゃいでも、それでいいのではないかと思ってしまうので、どんなシーンでも笑って見てしまえている。現場の人や観客はそうでもないのだろうけれど。

私が映画で一番良かったのは、もちろんあがたさんの姿や歌はいいのだけれど、地方のライブであがたさんを見に来ているお客さんの表情だった。ああ、この人はもう何十年もあがたさんのファンだったんだな、あ、この人はつきあいで見に来ているけれどなんだか知らないがすごいシンガーだなと思っているのだろうな、とか、本当にあがたさんの歌が聞けて感動しているなとか、数秒のコマに登場する観客の表情はどれも素晴らしかった。
あがたさんがどうあれ、あがたさんの歌を聞く側の人間がいるから歌はなりたつのであって、存在は一方向ではないのだということをしみじみ感じられた。

特に金沢のライブハウスでの演奏とその光景は最高だった。あがたさんが『踊ろうか〜』と歌うとお客さんが『踊りましょう〜』と合唱する。本当は歌はその後『どうせ今宵限りじゃない』と続くのだが、そのかけあいが素晴らしいのであがたさんは『踊ろうか〜』をやめようとしない。ずっと続く観客とのかけあいにあがたさんは『終わりたくないよ〜』と恍惚とした表情を浮かべる。シンガーとして至福の瞬間とは、このシーンのことだ。

この映画の前半部分のカメラは、佐伯慎亮くんだ。スチールのカメラマンであって、ビデオカメラは初心者である。たまたまあがたさんの友人が佐伯くんの友人で、紹介されて引き受けてしまったのだという。もちろん佐伯くんはアウトドアホームレスのメンバーでもあり、私とも旧知の仲だが、昨年、彼がこの映画の撮影に出発する前に、私に会いに来た。カメラをすることになったが、あがたさんのことを深いところまでは知らない、広重さんはあがたさんのアルバムのライナーノーツを書いていたはずなので、それを見せてくれないかと、大阪の店に寄ってくれたのである。もちろん彼には私の原稿のコピーを渡した。

映画のエンドロールにはもちろん佐伯くん、大分の三沢くん、埋火のしがちゃんなど、知り合いの名前がいくつか掲載されていた。それを見ながら、ああ、あがたさんの、この時期の映像がこうやって劇場作品になって残って、本当によかったと思えた。彼の歌は、次の世代にもちゃんと伝わっていく。

この日は佐伯くんと監督の竹藤さんのトークも少しあった。15分くらいだったかな。もっと長くいろいろなエピソードも聞きたかったな。

映画は12月11日まで十三で上映しているそうです。
映画の内容、全国での上映スケジュールはHPで確認を。
あがた森魚ややデラックス公式サイト

kishidashin01 at 08:37│clip!映画