2009年10月22日

蘆江怪談集


蘆江怪談集 (ウェッジ文庫)
著者:平山 蘆江
販売元:ウェッジ
発売日:2009-10-20
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rokouk




平山蘆江・幻の1冊「蘆江怪談集」が見事復刊された。

「蘆江怪談集」は昭和9年に発行されて以来、実に75年ぶりの復刊らしい。私ももちろんそのオリジナル本を見たことはない。いわゆる稀覯本というヤツだ。

私はこの蘆江怪談集からの1編、『火焔つつじ』を「現代怪奇小説集」というアンソロジー本で読んだことがあるが、それ以外の作品はもちろん初見のものばかり。
この本が今日、予約していた楽天ブックスから届き、さっそく読んだ。
とても興味深く、面白く、時には涙し、ぞっとしながら堪能した。

最近の超残酷描写に慣れた現代人にはものたりないかもしれないが、情念、男女の思い、生き霊、死霊など、人の思いがこの蘆江の怪談話の主人公である。
もちろん恐いが、そこはかとなく悲しい。

『火焔つつじ』はもちろんこの本収録の全タイトルの中でも1、2をあらそう素晴らしいエピソードだが、ほかの話も無駄のない秀逸な短編怪異談ばかりである。

『火焔つつじ』は和田誠監督によって映像化されている。映画は「怖がる人々」というアンソロジーもので、その中の1話だった。この映画はなぜかDVD化されていない。この映画には日影丈吉の『吉備津の釜』も収録されている。残念ながらこの話は映画よりも小説のほうが、恐い。しかし『火焔つつじ』は和田監督によって見事に映像化に成功していると思う。

この文庫本、その和田誠が装丁を行っている。これも素晴らしい縁ですね。
まずは「蘆江怪談集」復刊おめでとうございます。
たくさん売れることを祈っております。

紀田順一郎氏が古い書物からきちんと平山蘆江の作品を選んで「現代怪奇小説集」に収録してくれたこと、それを和田誠監督が映像化したこと、本が出て75年もたっても平山蘆江を覚えている人が何人かいて、その思いがいつしかつながって復刊になったこと。

たとえ少数でも、いいものを伝えていこうという人がひとりでもいる限り、なにかの思いは引き継がれていくということ。


たぶん私のブログ読者のほとんどは平山蘆江という作家を知らないだろう。
YouTubeの『火焔つつじ』をあげておきます。(たぶん著作権違反だけれども、いいよね)

これを見て気持ちがひかれたら、ぜひこの文庫を買ってくださいね。








kishidashin01 at 23:59│clip!読書