2009年04月18日

ごめんね、レコード・ストア・デイ

昨夜トークをしにいったライブは初日がHOKAGE、今日と明日は十三ファンダンゴで開催される3日間のロックイベントで、協賛に「レコード・ストア・デイ」とあり、レコード・ストア・デイの主旨を書いたポスターも貼ってあった。

昨年から主にアメリカでスタートしたこのレコード・ストア・デイは、小規模のレコードショップがどんどん閉店している現状をなんとかしようと立ち上がった企画のようで、日本でも個人商店的なCDショップが協力しあっているらしい。
日本のレコード・ストア・デイのURLは
http://www.myspace.com/recordstoredayjapan
となっている。

そもそもレコードショップに行こう、レコードショップは本当に素晴らしい場所だ、そこで音楽や人との出会いがあるのだ、音楽はこういうところで出会ってこそ素晴らしい、という主旨(だと思う)の企画なのに、そのことのインターネット告知が『http://www.myspace.com/』になっているのは、どうかと思う。

myspaceはどこか「誰もが立ち上げたとたんに"アーティスト様"」な雰囲気があまり好きになれないでいるのだが、今後のインターナショナルなミュージシャンや音楽愛好家とのつながりには欠かせない存在になっているorなりつつあるのは否定しないものの、なんともいえない生ぬるさも感じている。そしてネット配信だのダウンロードなどで苦しめられている(ように見える)レコードストアがmyspaceで告知している現状の、この圧倒的な弱さを知らしめているようで、なんだか気が重い。

そもそも昨日トークしたHIDEくんも私も、レコードストアにはまず行かない。
HIDEくんは自分の創作には関心があっても他人のCD作品には基本的には興味がないようだ。私はAMSを昨年閉めたので、レコードストアデイに参加する資格もなければ、むしろ経済的事情とやらでさっさとマーケットを裏切った側なので、戦犯に近いのではないかと思う。かろうじてアルケミーレコードというインディーズレーベルを25年もやらせていただいてはいるが、大阪のインディーズシーンをささえているのはアルケミーではなくギューンカセットだろう。

昨日のトークショーでHIDEくんがいみじくも発言していたが、バンドのCDは大量にプレスしてタワーレコードやアマゾンや輸入盤やインディーズを扱うCDショップで販売されるものではなく、ライブ会場の来場記念品としてCDRで販売されるのがふさわしいものとなりつつある。
CDRでもプレスCDでも、入っている音楽の質、音質はかわらない。じゃあCDRなら必要な分だけ作ればいいわけで、なにも500枚も1000枚もプレスして、売れないかもしれないというリスクや、自分の狭い家をさらに狭くするための在庫を持つ必要もない。

過去にはいい音楽がたくさんある。それはザ・タイガースでも、岩崎宏美でも、ジャックスでも、山下洋輔トリオでも、裸のラリーズでも、ゴダイゴでも、ユーミンでも、カメカメ合唱団でも、シェシズでも、三上寛でも、フリクションでも、みんないっしょだ。全部懐メロだ。それらはプレスCDにされる資格がある。
しかし最新のバンドの音は、CDRで十分だ。
CDRにジャケットつけて、1枚100円以下で作れるだろう。それを500円とか、1000円で売って儲けたまえ。それでライブハウスの出演の足りないノルマや、バンドの交通費や、メシ代やなんやかやを補填するのだ。バンドの音楽がそれのためのものなのか、それでバンドがなりたつのか、本末転倒なのか、それは私は知らない。

レコードストアデイズ、なんて、本来は応援してあげたいが、やはり幻想だよ。全部つぶれるのだ。ミュージシャンがCDRでやっている、購入する側もCDRの方が安いからそちらを買うのだよ。メジャーリリースのものはアマゾンで買う。どこにもなくて、レコードストアとやらにしかないものだけを、レコードストアで買う。こんな消費者が大半の現状で、いくらキャンペーンをしたところでお客はショップには戻らないし、そもそも来てもらったところで買ってもらうものがない。
きつい言い方かもしれないが、そうじゃないかね。本当はそうかもしれないと、思っていないとでもいうのかね。タワーレコードはポイント2倍ディしか売れていないのではないのかな?違うかい?ディスクユニオン限定特典をつけているから売れているのではないのかい?ユニオン限定特典をつけている場合とそうじゃない場合の差は歴然としているのではないかな?

「善人はなかなかいない」とはオコナーの小説タイトルだが、音楽はミュージシャンが、リスナーが、コレクターが、レコード会社が、音楽雑誌が、放送メディアが、CDショップが、ネットが、携帯が、評論家が、みんなでよってたかって殺しにかかっているのだ。善人はなかなかいない。オレも戦犯だよ。お前もじゃあないかね。
だから音楽は、いったん終わるのだ。そしてそれは誰にも止められない。

で、それでいいのではないかと思う。

だって、ミュージシャンがなくなるわけではない。
音楽を聞くやつらがいなくなるわけではない。
音楽で喜んだり、感動したり、泣いたり、生きたり、死んだり、夢みたり、遊んだり、ワクワクしたり、しんみりしたり、そういうことになるやつらが、なくなるわけではないのだ。

形はかわるかもしれないが、そこんとこは何もかわらない。
歌だけが残る。
それが一番清い、そんなふうに思うなあ。

それをレコードやCDを残そう、もっと買おう、ショップを応援しよういうのとは、やはり分けて考えるべきじゃないのかな。
オレはCDやCDRがライブの会場の来場記念のおみやげものになったって、いいと思うよ。音楽なんて、コピーすればただで手に入るものなんだよ、そもそも。それを入れる外側に金かけて流通して、どこかで誰かが儲けていたんじゃないのかな。
歌に、値段はないよ。歌は金じゃない。

歌にあるのは、金じゃない価値なんじゃないかな。
お金では手に入らないものだから、こころに届くんじゃないのかな。

なにかが終わって、なにかが始まるんだよ。
その瞬間に我々は立ち会えるのだ。
素晴らしいことじゃないかなあ。

昨日は、そんなふうに思ったな。
全部はトークショー中には言えなかったけど。ごめんね。


kishidashin01 at 23:59│clip!音楽