2008年12月05日

ストリート・キングダム

地引雄一さんが東京ロッカーズから80年代半ばまでのインディーズシーンを追った単行本「ストリート・キングダム」が増補されて復刊された。

ストリート・キングダム―東京ロッカーズと80’sインディーズ・シーン
ストリート・キングダム―東京ロッカーズと80’sインディーズ・シーン


この本、元々はミュージックマガジンからソフトカバーで1986年に出版されたものだが、今回は写真も増やされ、ハードカバーになり、DVDで映像も付録されているという完璧な仕様。
地引さんの書く、東京ロッカーズの生々しいドキュメンタリー、吉祥寺マイナーやピナコテカレコード、そして地引さんが主催していたテレグラフレコードなどのインディーズレーベルのこれまた生々しいドキュメンタリーに、同じ関係者としての立場は別にしても、なかなかにリアルだ。

もしインディーズやライブハウスのブッキング、レーベルなどに興味をお持ちで、なおかつこの本を読んでおられないなら、一読をお薦めする。ライブに、ロックに、レコードに、ミュージシャンに夢を追い、制作や応援をしながら、それでいて傷つき、なにかを得、なにかを失っていく様は、本当に見事なまでにこの1冊に封じ込められているからだ。

当然、非常階段やSSなど当時の関西勢の写真も納められている。小さいがほぶらきんの意外な写真もあった。個人的にはワーストノイズのジュネ、角谷、工藤冬里、大村礼子の写真が胸にせまるものがあったなあ。
なんとも熱く、そしてある時は背筋が凍るように寒く、そしてなんてあたたかい写真なんだろう。地引さんの残したものはとても大きなものがある。

関西にはこのように一人でたくさんの写真をとったカメラマンはそんなに多くない。1979年当時、アルコール42%と一緒に行動し、関西NO WAVE連中の写真をたくさん撮っていた方が確かいらっしゃったはずだが、今は連絡がとれない。

DVDには驚くべきことに、1978年10月京都・西部講堂の東京ロッカーズのライブ映像が収録されている。これは林直人くんがミニコミ「アウトサイダー」を発刊させるきっかけとなったライブで、この日のことは今発売中の「ハードスタッフ」12号にも掲載されている。この日の映像があるとは思わなかったなあ。地引さんも現場にいらっしゃったんですね。

70年代末〜80年代前半のことが、ここ何年のうちにどんどん資料がまとまって本になっていく気がする。功罪あるかもしれないし、ウソの情報もまざってしまうかもしれないが、残さないよりは残した方がいいと思うな。
難しいけれど、今はそう思います。


kishidashin01 at 18:34│clip!読書