2007年08月17日

夕映えに死す

夏休み中に本を読む。
その内の1冊。

夕映えに死す (徳間文庫 さ 1-119)



笹沢左保/木枯し紋次郎シリーズは私の70年代からの愛読書だが、紋次郎という渡世人の設定が決まっているため、他のキャラクターの渡世人を主人公にすることができない。もちろん紋次郎は究極のキャラだろうが、主人公の渡世人が、もう少し人や世間に対して甘いとか、年齢が若い or 年をとっている、情に弱い、などの設定でのストーリーは紋次郎シリーズでは描けない。

この「夕映えに死す」は、夕焼けのシーンが必ず出てくること、渡世人が主人公であること、ラストで必ずその渡世人が死ぬこと、という設定で書かれた各話独立した短編集である。単行本がずいぶん昔に刊行されたのみで、初の文庫化となった。

もちろん紋次郎シリーズと同じく、全ての話がアンハッピーエンド、問題が解決しても読後に重いものが残る、笹沢作品ならではの異色な時代小説である。

どの話も面白い。紋次郎シリーズと同じくどんでん返しがあり、時代考証や風俗の描き方も見事。なかでも、ずうたいがでかく怪力でめっぽう強い渡世人なのに涙もろい”政太郎”が主人公の『夕映えに涙が笑った』、それまでは筋の通った人格者として知られた渡世人がある時を境に「生きているのがいやになりやしてね」と生きることに嫌気がさした男”浜吉”が主人公の『夕映えの道は遠かった』が秀逸。



あっしには関わりのねえことでござんす。


いやまったく、ほんとうに。



kishidashin01 at 20:39│clip!読書