2007年03月23日

阿佐田哲也

阿佐田哲也の小説で有名なのは「麻雀放浪記」だが、本名の色川武大では「離婚」で直木賞、「狂人日記」で読売文学賞なども受賞しており、そちらのほうが評価されるべきかもしれない。
つまりは娯楽小説は阿佐田哲也、純文学は色川武大という使い分けなのだろう。

しかし、私は阿佐田哲也名義の小説に出てくるキャラクター、セルフ、作者のちょっとしたコメントなどに、こころを奪われることが多い。
阿佐田哲也名義の作品はおそらくほとんど読んでいるが、一番好きなのは「ドサ健ばくち地獄」と「ヤバ市ヤバ町雀鬼伝」か。

『昔のように儲かったから成功する訳じゃない。借りられたから、生きて行けるのです。だから返すのはやめましょう。返金は自殺行為です。ただ無限に借りていって、出来れば利子だけを払って、ああだこうだいっていれば、そのうち年をとって死んじまう。生きるとはそういうことなのです。』(ヤバ市ヤバ町雀鬼伝)

生きるとはそういうことなのです、と言いきられてしまうと、もう感動すらしてしまいますね。(笑)

『黒手袋の李億春という男の特徴は、生きるということに関してまったく無責任であり、自分の生に意味づけや値定めをして、みずから慰めようとしないことである。』(麻雀放浪記・四〜番外編)

この指が8本ない李億春の生き様がなんともすさまじい。
もちろんピカレスク小説ならではのお話で、こんな男は実在はしないかもしれないが、自分の生に意味や価値を一切見いださないだけでなく、みずから慰めようとしないで生きるヤツが、もう少し世の中にいてもいい気がする。

生きてる価値などあるじゃなしとは、そういうことなのです。


麻雀放浪記(四) 番外編 角川文庫 緑 459-54


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